お城が好き

私がお城を好きになったのは、たしか小学校3年生くらいの頃でした。松本に住む親戚の家に遊びに行った時に、近くの本屋さんで買ってもらったのが、小学館の『城なんでも入門』という本だったのです。別に私が興味を示したから、というわけでもなくて「松本といえばお城でしょ」みたいな単純な理由で選んでもらったと記憶しています。

 

てっきり漫画本でも買ってもらえるのかと期待していた私は、その時こそ少しがっかりしたものの、家に帰ってその本を読み始めたところ、これが驚くほどに面白かったんですね。

この『城なんでも入門』という本、今から振り返ってみても非常に出来が良いもので、子供向けの入門書にもかかわらず、城の成り立ちやその役割、縄張りの目的や種類、防御の仕掛け、天守形式の分類など、かなり専門的なことまで図解で分かりやすく説明されていましたし、いかにも「子供向け」といった読者を甘く見たような表現がなかったのは、読んでいて逆に嬉しい点でした。もちろん、子供の大好きな「姫路城の大解剖図」なんてお約束の図解コーナーもあったりはしましたけど。

私が特に好きだったのは、巻頭のカラーページに載っていた熊本城の絵図と、巻末で紹介されていた全国のお城の情報でした。在りし日の巨大城郭の雄姿が描かれた絵図を見て興奮し(とりわけそれが熊本城だったものですから)、また、ほとんどが文字情報のみで、一部に不鮮明な写真が入っているだけの全国のお城紹介コーナーには、別の意味でも想像力が刺激されたものです(むしろ限られた情報しか載っていなかったからこそ、なのでしょうね)。

そんなわけで、この本が気に入って、ボロボロになるまで読み込んで想像力を膨らませてはいたものの、当時の私はまだ小学生。自分の足でそれら全国の城を見に行くことも出来ず、また当時は今のようにお城関連の書籍も多くはなかったものですから、仕方なく自分自身で考えたお城の絵を描くようになりました。

最初は天守閣ばかりを描いていましたが、そのうちに小天守も付け足すようになり、さらにそれらを囲む櫓を描き加えて本丸、さらに二の丸と、どんどん範囲が広がっていき、始めはカレンダーの裏面1枚からスタートしたものが、2枚、3枚と継ぎ足して、最終的には二畳ほどの大きさになってしまうようなものを何種類も飽きずに描いていました(残念なことに今では一枚も残っていません)。
当然、子供が考えるものなので七重天守に五重の小天守、本丸は全て三重櫓…なんて感じの滅茶苦茶なお城ばかりでしたけど、縄張りについてはそれなりに工夫をしていたようです。

さて、そんな孫のことを理解してくれたからかどうかは分かりませんが、ある日祖母が知人の本屋さんのお薦めとかで、『定本 信州上田城』という豪華な本を買ってくれたのです。当時の定価でなんと18,000円!どう考えても子供に与えるような本じゃないですよねぇ…。

昭和61年4月23日発行 現在でも、上田城について書かれたこれ以上の本はないと思います

内容はさすがに専門的すぎて小学生の私には全く理解は出来ませんでしたが、豊富な写真と絵図、さまざまな方角から撮られた精密な上田城の復元模型のページなどを飽きずに眺めていました。特に感動したのが、見開きで載っていた下の「上田城中核部実測復元図」です。

上田城中核部実測復元図。なんかこう、来るものがありませんか?

これ、わかる方には共感して頂けると思うのですが、この図面を見ると何かものすごく興奮させられるものがあるんですよ。私にとっての『定本 信州上田城』といえばこのページ、というくらい何度も何度も見返しました(だからこのページだけとても汚れています…)。

仮想の上田城御三階櫓

久々にこの本を開いたら、右のような絵がページの間に入っていました。1989年1月(昭和最後の月!)のカレンダーの裏面に描かれているので、小学校5年生の頃のものでしょう。「もし仙石氏が上田城に天守閣を建てていたなら」という仮定で描いた記憶があります。
単に現存の隅櫓の下に一層分を描き足しただけのようにも見えますが、そこは当時既にお城マニアであった私のことですから、「建てられた時代的に幕府が四重以上の天守を許可するはずがない」みたいな現実的なことを考え、各地に建てられた天守代用の三階櫓を意識してこんな絵にしたのだと思います。破風類の装飾すら一切ないのは、その直前に水戸城天守閣(御三階櫓)の古写真を見て衝撃を受けたからだったはず。

以後、暇な時にお城の絵(というより、どちらかというと縄張り図)を描くのが趣味の一つになりました。下の図面は、大学生の頃に暇に飽かして描いていたもの。未完成、というか途中で力尽きていますが、本来はこのさらに外郭までも描こうとしていました(頭の中では城下町まで出来ていたんだけど)。まあ時間があればこそ、ですよね。こういったものは。

コンセプトはたしか「古い平城を改修した大大名(天下人?)の城」。 知人に見せたら「頭おかしい」と言われてしまいましたが…

『城なんでも入門』を読んで姫路城が大好きになった私は、小学校卒業後の春休みに一人で夜行列車に乗ってその姫路城を実際に見に行く、という大冒険を決行していたりもします。
ただ、お城が好きになった最初のきっかけからして本ですし、より深く好きになった理由も『定本 信州上田城』を飽きもせずに眺め続けていたからであり、絵図や復元図を見ながら頭の中でいろいろと想像を巡らせているだけでも十分に楽しいんです。そんな妄想の中から出てきた奇抜な仮説を、これからいくつか書いていこうかと考えています。

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