優しい色調で描く中望遠 / トラベナー Travenar 90mm f2.8 R

A.シャハト / Travenar 1:2.8/90 R

 

コンパクトな中望遠

シャハト社が1962年~63年頃に発売した中望遠レンズ。ゼブラ柄を基調としたコンパクトな外観が特徴で、ライカLマウント用をはじめ、M42マウントやエキザクタマウントなど各種一眼レフマウント用も生産されました。トラベゴンS-Travegon 35mm f2.8)と同様にこのレンズもあのルートヴィッヒ・ベルテレが設計したと書かれている文章をよく目にするのですが、正確な情報なのかは分かりません。そうだったらいいな~、とは思いますけど。

外観
外観

非常に細身でコンパクト、携帯性も抜群です。「トラベナー」の名前の由来については諸説ありますが、「旅行(トラベル)に携行できるレンズ」という説に一票入れたくなるほど。

この個体はライカLマウント用で、絞りはf2.8~f22までの不等間隔、f2.8~f8は半段クリック付き。羽根は16枚もあり、絞ってもきれいな円形です。回転ヘリコイドで絞り環がピントリングと一緒に回ってしまうため、繰り出した時でも確認がしやすいように鏡胴の反対側にも同様の絞り指標が用意されています。最短撮影距離は1m。

travenar9028el
Travenar 90mm f2.8

レンズ構成は3群4枚のテレゾナータイプ。明るさを抑えた中望遠レンズに適した光学系とされ、このレンズの前身である85mmのトラベナー(Travenar 85mm f2.8)や、同時期の製品としてはメイヤー社のテレフォガー(Telefogar 90mm f3.5)、シュタインハイル社のキナー(Quinar 85mm f3.5 / 同 100mm f3.5)などにも同様の構成が採用されています。

トラベゴン35mm/トラベナー90mm
トラベゴン35mmf2.8とトラベナー90mmf2.8

トラベゴン(M42マウント)と並べました。トラベナーはLマウント用なので全長が少し長く見えますが、一眼レフ用の個体なら標準レンズと同じくらいにコンパクトです。なお、一眼レフ用ではフィルター径が48mm→49mmへと変更され、自動絞りへの対応からか(あるいはコストダウン?)絞り羽根の枚数が減らされてしまったタイプもあるようです。

使用例
使用例

専用フードは見たことがありませんが、フィルター径が同じ48mmということでコムラーの望遠レンズ用フードを付けて使用しています。以前も述べましたが、このフードは根元で分割してシリーズフィルターを挟むことが出来ますし(裏返した薄枠の49mmフィルターで代用可能/ただしあくまでも自己責任で!)、分割した前半分はシリーズ7フードとしても使えますから、特殊径の対応用として持っていれば何かと便利。中古価格も安いですし。

 

描写の特徴

このレンズは絞り開放ではやや甘さが見られるものの、少し絞るだけで中心付近の解像度が非常に高くなります。周辺部ではさすがに落ちますが、f5.6あたりまで絞ることで均質になります。ボケも自然で距離や絞りに関係なく常に安定しており、乱れることはほとんどありません。個人的には開放から半段ほど絞ったあたりの描写が一番のお気に入りですね。

そして、何より特筆すべきはその発色。誇張のない、柔らかくて優しい色再現をしてくれるのです。色彩で言うところの「ソフトトーン」や「ダルトーン」といった中間色系の色調になり、華やかさにはやや欠けるものの、穏やかで落ち着いた雰囲気の上品な描写をします。適度なコントラストと高い解像力のおかげか、この手のレンズにありがちな「甘い・眠い・メリハリがない」といった欠点も見られず、とてもバランスの良い写りをするレンズです。

 

トラベナーで撮ってみる/カメラ:SONYα7

※画像右下のルーペマークをクリックすると、合焦部分の拡大画像が表示されます。
※撮影時の設定、データの処理等についてはこちらをご参照下さい。

八坂神社
八坂神社 節分祭/絞り:f2.8‐4

合焦部分の拡大画像

開放から半段だけ絞っていますが、描写はとても安定しています

北野天満宮①
北野天満宮/絞り:f2.8‐4

合焦部分の拡大画像後ボケもとても自然です

北野天満宮②
北野天満宮/絞り:開放

合焦部分の拡大画像

須賀神社
須賀神社/絞り:f2.8-4

合焦部分の拡大画像紅梅の上品な色が良く出ていると思います

金戒光明寺
金戒光明寺/絞り:開放

合焦部分の拡大画像

真如堂①
真如堂/絞り:開放

合焦部分の拡大画像なかなか潰れない暗部に感心します

鴨川
鴨川/絞り:f4

合焦部分の拡大画像独特な色調ですよね

京都御所
京都御所/絞り:f2.8‐4

合焦部分の拡大画像

首途八幡宮
首途八幡宮/絞り:f5.6

合焦部分の拡大画像

「首途=かどで」と読みます。小さな神社ですが、その歴史はなかなか興味深い…

雨宝院
雨宝院/絞り:f5.6

合焦部分の拡大画像

建仁寺
建仁寺/絞り:f2.8-4

合焦部分の拡大画像

ずいき祭①
北野天満宮 ずいき祭/絞り:f4

合焦部分の拡大画像

ずいき祭②
北野天満宮 ずいき祭/絞り:f4

合焦部分の拡大画像

北野天満宮③
北野天満宮/絞り:開放

合焦部分の拡大画像

東山清水
東山清水/絞り:f2.8-4

合焦部分の拡大画像こういった逆光でのフレアは嫌いではありません

若王子
若王子/絞り:開放

合焦部分の拡大画像睨まれた!?

真如堂②
真如堂/絞り:f2.8-4

合焦部分の拡大画像

南禅寺
南禅寺/絞り:開放

合焦部分の拡大画像

真如堂③
真如堂/絞り:f28-4

合焦部分の拡大画像

圓光寺
圓光寺/絞り:f4

合焦部分の拡大画像

等持院
等持院/絞り:f5.6

合焦部分の拡大画像

八坂の塔
八坂の塔/絞り:f2.8-4

合焦部分の拡大画像少し絞っただけですが、遠景もよく解像しています

 

優しい発色をするレンズなので光の柔らかい穏やかな光景が向いているのかと思いますが、むしろ光量が多めでコントラストのある場面で撮影した写真の方がその実力を発揮しているようにも見えます。スッキリとして抜けが良く、ボケも自然で安定しているため、爽やかな透明感のある描写をしてくれるんですよね。力強い表現には向きませんが、被写体の自然な姿を誇張なく捉えてくれる素晴らしいレンズであり、個人的に大好きな中望遠レンズです。

海外のレンズ

織物提供:小岩井紬工房

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