別所線沿線撮り歩き / 前編

上田駅~中塩田駅

 

今頃ではありますが、今年の正月に帰省した際に実家のある上田市内を走るローカル私鉄、上田電鉄別所線の沿線を撮り歩いてきましたので、その時の写真を簡単にまとめてみます。

別所線は上田駅―別所温泉駅(11.6km)の間を走る地方私鉄路線。かつては上田地域に50km近くの鉄道網を誇った上田丸子電鉄の一路線でしたが、他の路線は1970年代までに全て廃止されてしまい、現在ではこの別所線のみが残されて運行を続けています。別所線の開業は1921年(上田駅乗り入れは1924年から)なので、もうすぐ100周年を迎えますね。

 

上田駅

別所線上田駅

別所線上田駅のホームです。一面一線の単式ホームで、長野(北陸)新幹線の開業に伴って高架化されました。駅構内に設けられた窓は円形で統一されており、かつてこの路線を代表する車両であったモハ5250形電車(丸窓電車)の戸袋窓の形をモチーフとしています。
それ以外はやや殺風景な内装で、せっかく温泉地へ向かう路線なのだからもう少し旅情感を演出してもいいのでは?とも思うのですが、下手をするとものすごく野暮ったいイメージになる危険性も高そうなので、むしろ車両にレトロ感を出したりする方が効果的でしょうか。

YouTubeに地上駅時代の動画がありましたので引用させて頂きました。車両の塗装から見て1989~90年頃かと思われます。私は当時中学生で、電車通学だったことから毎日のように向かいのJR線のホームからこの別所線の光景を眺めていました。なんとも懐かしい限り。

また、この動画には運転台からの前面展望(往復分)が収録されているのですが、ちょうど上田原電車区が解体されている様子も映っています(7:00~)。子供の頃大好きだった場所が壊されている光景というのは非常に心が痛みますが、映像資料としては貴重ですね。

当時の私は旧型電車の走らなくなった別所線にはそれほど興味が持てなかったのですけど、こうして見ると東急5000系にもなかなか味があったんだなぁ、と再認識されられます。ちなみに、現在の渋谷駅前に置かれている5000系のトップナンバー車体はこの別所線を走っていた車両が里帰り(?)したものです。適切な保存方法なのかは疑問もありますが。

 

千曲川橋梁

上田駅を発車した別所線の電車は左へと大きくカーブし、すぐに千曲川に架けられた鉄橋を渡ります。開業から3年後にこの橋が完成したことにより、別所線は上田駅への乗り入れが可能となりました(それまでの始発駅は対岸の三好町駅)。もともとこの鉄橋区間は1938年に廃止された青木線の一部であり、別所線は青木線に乗り入れしていた形だったようです。

千曲川橋梁①

別所線千曲川橋梁のパノラマ写真。赤色に塗装された5連のトラス橋が風景の中に映えます

千曲川橋梁②鉄橋を渡ってきた6000系「さなだどりーむ号」を上田駅側から撮影。う~ん、ちょっとシャッターを切るタイミングが遅かったですね。どうも走行車両を撮影するのは苦手です…

千曲川橋梁③

上田駅からの折り返し列車を河川敷で。この橋を渡る旧型電車たちを撮ってみたかったなぁ

千曲川橋梁④

対岸から上田駅方向を見たところ。5連分のトラスが重なり合って荘厳な印象を受けますね

 

城下駅

千曲川を渡って最初の駅が城下駅です。開業当初の線路は今よりも少し北側の県道(現在の県道77号/国道143号)に敷かれた軌道線でしたが、千曲川橋梁が完成してからはこの城下駅から上田原駅までの間が専用軌道となりました。しかも、その区間は青木線と別所線が別個に並べて敷かれていたために、一見すると複線のような状態になっていたらしいです(そのあたりの変遷についてはこちらのページが参考になりました)。

城下駅①城下駅の手前にある遮断機のない小さな踏切。個人的にこういった踏切が大好きなんですよ

城下駅②二面二線の交換可能駅です。上田駅が単式ホーム構造のため、朝夕のラッシュ時にはこの駅で列車の交換が行われています。典型的なローカル私鉄の近郊駅、といった感じでしょうか

城下駅③かつてこの駅から上田原駅までは別所線と青木線の2本の線路が並べて敷かれ複線のような状態になっていました。青木線の廃線後に線路が取り払われ、現在では単線になっています

地元のケーブルテレビ局(UCV上田ケーブルビジョン)が制作した前面展望動画で同区間を確認してみると、たしかに現在線路が敷かれている場所の右側にもう1本分の線路用地があることが分かります。先ほどの動画からの上田原駅(9:50~)の変貌ぶりも見どころ

 

城下駅~三好町駅

城下駅~三好町駅①城下駅と三好町駅の間にある踏切。前後に緩くS字状にカーブしている道がたまりませんね

城下駅~三好町駅②同じ踏切を反対側から。奥の方でもさらにカーブしているところがなんとも言えずいい感じ

城下駅~三好町駅③先ほどの踏切の50mほど西側にあるもう一つの踏切。こちらもまた良い雰囲気なんですよ

城下駅~三好町駅④走り去る1000系の「まるまどりーむ号」。住宅地の中なのに妙に開放的な印象を受けるのは、線路周辺の土地に余裕があるから、つまりは青木線の跡地が今でも残されているからかもしれません。80年も前に廃線になった路線の痕跡なのだと考えてみると面白いですね
(最初の動画を見ると、当時はまだ複線用の架線柱がところどころに残っていたようです)

三好町駅①

三好町駅の入口。待合室の扉には上田駅と同様に楕円形の「丸窓」がデザインされています

三好町駅②線路はまっすぐ西へ向かい、上田原駅を出たところで大きくカーブして南に進路を変えます

 

下之郷駅

三好町駅~下之郷駅の間については今回歩き回る時間がなかったため、また今度帰省した際にでも改めて巡ってみようかと思っています。そんなわけで、お次は下之郷駅になります。

下之郷駅①下之郷駅は上田駅と別所温泉駅以外では唯一の有人駅で、一面二線の島式ホームの上に駅舎と待合室を兼ねた建物が設けられており、「日本中央」そして「御神体が大地」なことでも有名な生島足島神社の最寄り駅でもあることから、その柱は朱色に着色されています。また架線電圧の昇圧以降、上田原駅にあった車両基地機能がこの下之郷駅構内に移転されました

下之郷駅②かつてこの駅からは西丸子線という路線が分岐をしていたのですが、1963年に廃線となってしまい、その当時のホームと待合室が現在でも構内に保存されています(写真左側の建物)

下之郷駅③

西丸子線の説明板。廃止されてから50年以上も経ちますが、沿線には今でも遺構が数多く残されているそうですので、また機会があったら廃線巡りなどもしてみたいと思っています

下之郷駅④西丸子線の旧ホーム。こういった遺構に不思議なロマンを感じてしまうのはなぜでしょう?

下之郷駅⑤下之郷駅を出た線路は再び大きくカーブをして進路を西に変え、別所温泉駅へと向かいます
ここから先は塩田平の穀倉地帯であり、電車が写真奥にも見える独鈷山を背景にして長閑な田園風景の中をトコトコと走り抜けていく姿というのはとても絵になって好ましいものです

ところで今回、写真の右側にある車庫及び整備施設の写真を撮り忘れてしまいました。私がいかに現在走っている車両に興味がないのかバレてしまいますよね。なんともお恥かしい…

 

中塩田駅

車窓から見た中塩田駅電車に乗って中塩田駅へ。車窓から見ただけでもかなり立派な駅舎であることが分かります

中塩田駅①中塩田駅の駅舎。別所温泉駅ともよく似た意匠の建物で、無人駅となった今でもしっかりと残されています。一時は外壁などが剥がれてボロボロの状態になってはいたものの、近年に修復され塗装も鮮やかになりました(もう少し明度が低い彩色の方が良いとは思うけれど)

中塩田駅②駅舎の入口の庇に付けられているのは上田丸子電鉄時代の社紋です。歴史が感じられますね

中塩田駅③かつては2面2線の交換可能駅だったため、向かい側のホームにも建物などがあったのですが、現在は単式ホームとなり、使われなくなった側の線路には保線車両が留置されています
(往時の様子はこちらのページが写真も多くて参考になります※先ほどの城下駅と同じ方)

なお、丸窓電車がこの駅で折り返しをする貴重な映像がニコニコ動画にあったのでリンクを貼っておきます(埋め込みが出来ないようなので)→上田交通 ’84※当該箇所は3:05~
いや~、吊り掛けの音っていいですよね。今ではもう路面電車くらいでしか味わえませんが

中塩田駅④向かい側のホームへと渡るための階段。上の動画でもご婦人がここを降りる姿が見られます

中塩田駅⑤途切れた線路。なんとも寂しい気分になりますが、ホームを整備してポイントを復活させるだけですぐに交換可能駅に戻せる状態だとも考えられるので、悲観はしないでおきましょう

中塩田駅⑥駅の東側にある側線。ここには長らく廃車となった丸窓電車(モハ5253)が放置されていましたが、10年ほど前に長野計器に引き取られ、お化粧直しをした上で資料館となって一般公開されています。また、この側線は上田駅が高架化されて以降に移籍して来た車両の搬入路としても使われているそうです(地上駅時代は上田駅構内にあった渡り線から搬入)

中塩田駅⑦

駅の裏側にある細い通路。この場所は映画『男はつらいよ 寅次郎純情詩集(1976年)』の中に登場します。作品の冒頭はいつものように寅さんの夢で始まるのですが、その居眠りをしていた場所というのが中塩田駅裏側にある床屋さんだったという設定。このシリーズ第18作は別所温泉が舞台となっており、当時の塩田平や温泉街、そして別所線の様子などが丹念に描かれていて嬉しくなります。↓↓予告編ですが参考までに(電車は最後にチラッと登場)

檀ふみと京マチ子のダブルヒロインで、ラストが特殊な形で終わる物語のためにシリーズの中でも異色作とされる本映画ですが、個人的にはなかなかの良作だと思うのでおススメです

中塩田駅⑧無人駅となった今でも改札が残されているのは嬉しいですよね。現在は駅舎の中を通らなくてもホームには自由に出入りできるようになっています(駅舎は待合室としての役割のみ)

中塩田駅⑨細部までデザインが工夫された素敵な建物ですので、頑張って保存してもらいたいものです

中塩田駅⑩

この駅を出た列車は塩田町の中心部を抜け、再び田園地帯の中を別所温泉に向けて進みます

 

…というわけで今回はここまで。続きの塩田町駅~別所温泉駅は後編

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