八坂~清水寺
意外なお滝
前回の続きで、東山周辺に点在するお滝紹介の最終回です。今回の範囲は八坂の円山公園~清水寺まで。また、番外として山科にある毘沙門堂のお滝についても簡単に触れてみます。
東山のお滝(全体図)
今回ご紹介する範囲です。番外の毘沙門堂は全体図の右下をご参照下さい
吉水大辨財天女
八坂神社から円山公園を抜けた先の山際にあるお堂で、「円山の弁天さん」とも呼ばれます
芸能、学問、商売繁盛の神様として知られ、祇園界隈からの信仰も厚いとか
この弁天堂の右奥にお滝があります
水量は少ないものの、涸れてはいません。お滝の上に祀られているのはお不動さん
お堂の裏側にある独特な造形の多宝塔。鎌倉時代のものだそうで、重要文化財
吉水の井。法然上人が閼伽に使ったと言われています
現在は山際にぽつんと立つ吉水弁財天ですが、かつてはこの北側に隣接する安養寺の境内にあるお堂の一つだったそうで、明治時代の廃仏毀釈により安養寺が現在の場所に移設された後も弁天堂としてここに残されたものだとか。お堂横にお滝や閼伽井が残るように、昔からここは良い水が湧く場所だったようで、「吉水」の名前もそこから付けられたのでしょうね
実は、私が東山周辺にお滝がたくさんあることを知るきっかけとなったのがこの吉水弁財天なんですよ。意外な場所にお滝があるのを発見して驚き、「もしかして伏見稲荷以外の東山山麓にもお滝が点在しているのでは?」と想像力が働いたわけです。心当たりがある場所もいくつか頭に浮かびましたしね。まあ、正直ここまで数が多いとは思いませんでしたけど…
長楽寺
吉水弁財天から山沿いの道を南に100メートルほど歩くと、次の長楽寺の山門前に出ます
長楽寺。時宗のお寺で、かつては円山公園一帯に広大な寺域を領していたとか
平清盛の娘である建礼門院が平家滅亡後にここで落飾したと伝えられています
山門を入ると本堂まで石段が続きます。本堂のご本尊は准胝(じゅんてい)観音
本堂の左側にお滝があります。手前の説明札には「平安の滝」と書かれています
説明札
十分な落差があって、スケールの大きな非常に立派なお滝です
また、周囲の石積みの上端部には石仏の姿がいくつも見えます
散り椿
沈丁花
庭園
観光客も少なく、趣のある落ち着いた雰囲気の境内です
長楽寺の参道。円山公園のすぐ隣なので、機会があればぜひ訪れてみて下さい
清水寺
東山のお滝巡り、その最後を飾るのは観光地としてあまりにも有名な清水寺にあるお滝です
「清水の舞台」でおなじみの本堂は屋根の檜皮葺き替え工事中
桜も終わり、これからは新緑のシーズン
清水寺でお滝と言えば、もちろんこの「音羽の滝」になります
現在では全く違う使われ方をしているため、そう認識する人は
少ないでしょうが、これも滝行をするためのお滝なんですよね
お滝の落下点には、それぞれ滝行用の足場がちゃんと用意されています
そういった視点で見てみると、「お滝」としての本来の姿が浮かんでくるような気も…
「お滝」なのですから、その上には当然ながらお不動さんも祀られています
音羽の滝に限った話ではありませんが、誰でも行ったことがあるはずなのに
その本来の目的や用途がよく知られていない場所って意外と多いんですよね
山科/毘沙門堂
清水寺から東に3キロほどの場所にある山科の毘沙門堂です。今回の「東山のお滝巡り」に加えるべきかどうかは微妙なところでしたが、ここでは番外として扱っておこうと思います
毘沙門堂は山科の北端に位置する天台宗の門跡寺院。山際にあるため石段を上ります
石段を上り、山門を入った正面が本堂で、ご本尊は毘沙門天が祀られています
本堂の右側にある高台弁財天のお堂。この後ろ側にお滝があります
お滝です。過度に人の手が加えられていないため、自然と調和した印象を受けます
お滝
お滝の向かい側、弁天堂の裏側に「行者専用控所」というのがありました
ところで、毘沙門堂は私が京都で一番桜が美しいと思っているお寺でもあります
本数はそれほど多くありませんが、一本一本の質の高さ、また山際という立地や
風格のある門跡寺院の建物との調和が素晴らしく、そして何よりも宸殿前にある
「毘沙門しだれ」と呼ばれる枝垂れ桜の枝振りの見事さが大好きな理由なんです
その「毘沙門しだれ」を動画で撮影してみました。閉門後に駐車場側から撮ったものです
もうかれこれ20年近く、桜の季節になると毎年必ず通い続けているお気に入りの場所!
東山のお滝巡りはこれで終了です。ただ、もう少しだけ範囲を広げるとまだまだあちこちにお滝はありますので、次回は補足編として洛北に点在するお滝を簡単にご紹介してみます。