複雑怪奇なアルファベット記号
危ない!?ソリゴール沼
「ソリゴールには手を出すな!」…これは若い頃に年配のレンズコレクターの方から頂いたありがたい忠告のお言葉です。たしかにソリゴールレンズというのは製造年代の幅が非常に広く、また関連するメーカーも中小まで含めればその数は膨大で、しかもOEM生産された商品がほとんどですから供給元がどこであるのかといった正確な情報も全く得られません。安易に興味本位で調べてみようなどと手でも出そうものなら、底なしの沼に嵌って脱出不能に陥る、つまりミイラ取りがミイラになるからやめておけ、という趣旨だったのでしょう。
幸いなことに、現在では製造番号の頭に付されたアルファベット記号や、それに続く最初の1~2桁の数字から製造メーカーの特定ができるようになり、その一覧表を参照することである程度の分類は可能となっているらしいのですが、残念ながらこの分類が適用されるのは主に1960年代半ば以降の製品で、それ以前についてはまだ未解明な部分も多いのです。
きっかけは藤田光学
そんな忠告を受けていたこともあって、私もなるべくソリゴールレンズには深入りをしないように心掛けていたのですが、ある時期から藤田光学製のレンズに興味を持つようになり、初期のミランダカメラに供給された「Yナンバー」のソリゴールが藤田光学製である可能性が高いという情報を知ってから「最初期のミランダに関係するソリゴールだけに範囲を限定すれば調べてみても大丈夫なのではないか?」という甘い誘惑に負けてつい足を踏み入れてしまったわけです。まあ、結果はもちろん泥沼だったわけですけれども…。
そんなわけで、これから数回にわたって初期のミランダ用に供給されたソリゴールレンズとその周辺のあれこれについて私なりの考察をしてみたいと思います。といっても、特に資料などを読み込んだわけではなく、実際の製品を手に取って比較しただけの感想みたいなものが中心となりますから過度な期待はしないでください(新事実発見!とかではないです)。
今回は「序説」となりますので、これから取り上げるレンズを簡単にご紹介しておきます。
①「Yナンバー」ソリゴール
最初期のミランダカメラに供給された「Yナンバー」のレンズ群です。藤田光学製と言われており、標準レンズ以外はm42マウントやエキザクタマウントでも販売されていました。
②「Yナンバー(後期)」と「T.Yナンバー」ソリゴール
ミランダ外爪マウント用の「Yナンバー」のソリゴールと、Yナンバーの後期から登場した「T.Yナンバー」のソリゴールです。T.Yナンバーは興和製の可能性が高いという意見も目にしますが、私は藤田光学製だと考えています。これについては次回詳しく述べる予定。
③「プロミナーミランダ」と「Kナンバー」ソリゴール
言わずと知れた興和製の「プロミナーミランダ」です。これにも何種類かのバリエーションがあって、「プロミナー」から「Kナンバー」へと移行する過程が見られて興味深いです。
④「Kナンバー」ソリゴール
興和製と言われる「Kナンバー」のソリゴールは、ミランダオートメックスの頃まで供給が続き、その後はアルファベット記号のない「オートミランダ」銘へと変更されることに。
⑤さまざまな記号のミランダ用レンズ
主に低価格帯用に供給されたミランダマウント(m44)のレンズ群です。それぞれ異なるアルファベット記号が付されており、供給元が違っていた可能性も高いように思われます。
⑥「外Kナンバー」のレンズたち
私が勝手に「外Kナンバー」と呼んでいるレンズ群です。製造番号から外れた場所に単独で「K」と記されており、これはソリゴール以外のブランドのレンズにも類例が見られます。
⑦「後Kナンバー」のレンズたち
私が「後Kナンバー」と呼んでいる、4桁の数字の後ろに「K」と記されたレンズ群です。以前に取り上げたライカLマウントのソリゴール35mm f3.5もここに含まれますが、どうやら製造メーカーは同じではないようで、この「後K」の意味するところは謎ですね。
⑧「後Tナンバー」と「TNナンバー」ソリゴール
最後は4桁の数字の後ろに「T」と記された「後Tナンバー」と、TとNを重ねて表記した「TNナンバー」のソリゴールです。その外観から田中光学製である可能性が高そうです。
以上のように大まかに分類した中でそれらのレンズの特徴を少しずつ見ていきたいと思っています。残念ながら入手出来ていないレンズもたくさんあり、限られたサンプルからの考察とはなりますが、それなりに仮説なども立ててみたりしますので、今後にご期待ください。
→「Y」ナンバーソリゴール編
→「K」ナンバーソリゴール編
→それ以外のさまざまな記号編/前編
→それ以外のさまざまな記号編/中編
→それ以外のさまざまな記号編/後編